最終更新日 2023年7月4日
採用目標を達成するには、まず学生に興味をもってもらわねばなりません。
その第一歩となるのがインターンシップです。
学生と接点を持つべく、インターンシップを開催されている企業様は多いと思われます。
募集を始めてコンスタントに集まるのが理想ですが、今は学生に主導権がある売り手市場です。
「募集を始めたけど、学生の反応がわるい」、「学生が競合他社に流れてしまわないか」と不安をいだきながら、業務にあたっている人事担当者様は少なくないでしょう。
本記事では、「25年卒のインターン動向」と「学生を集めるために有効な施策」をまとめます。
この記事の目次
インターンシップの動向
具体的な施策に言及する前に、学生が「就職活動においてインターンシップをどのように考えているか」をみていきましょう。
1.学生の考え方
株式会社i-plugによると25年卒の93.9%が「参加する」と回答しています。
▷(株式会社i-plug 夏季インターンシップに関する調査)より出典
新しい環境に身を置こうとするとき、私たちが考えるのは「その職場で上手くやっていけるか」です。
ビジネスシーンにおいては「業務内容への適性」と「人間関係」がその指標になるでしょう。
人事担当者様は「戦力になってくれる人を見つけたい」と考えて採用活動を展開されると思いますが、それは学生も同じです。
職場で上手くやるには、まず業務で結果を出さねばなりません。
そこで学生は第一に「自分が業務に対応できそうか」を推察します。
新卒1年目は、覚えることが多いもの。実際のところ「できる限り業務だけに集中したい」と話す新入社員は少なくありません。
そんな思いもあり、「できる限りストレスを受けたくない」と考え、彼(彼女)らは、インターンシップの段階から「自分が貴社のメンバー様とうまくやれるか」を考えているのです。
これらを就活セミナーやノウハウ記事では「職場の雰囲気」と言いますが、それは実際に社員様と話さなければ感じ取れません。
スマートフォンが普及し、簡単に情報を集められるようになったにも関わらず、参加予定が90%を超えているのは、学生に「ネットでは得られないリアルな情報を知りたい」との思いがあるからでしょう。
裏を返せばこれは、選考前に学生が知りたい情報を提供できた企業様が持ち駒として残るという事実の表と言えます。
2.前年からの変更点
24年卒との違いは、インターンシップの評価を選考にも持ち込めるようになったことが挙げられます。
いわゆる「選考直結型インターン」の開催です。
これまでインターンシップは「職業選択の一環」と定義されてきました。
とは言え、実際のところ人手不足を背景に採用活動は早期化しています。
これを受け、以下の条件を満たせばインターンと選考評価を正式に関連づけられるようになりました。
●最低5日間以上の実施
●就業体験が必須
●実施期間の半分以上を就業体験に当てる
●現場の社員が指導・フィードバックを行う
●大学の長期休みに実施
開催期間は「5日以上」かつ「就業体験とフィードバック」が必須となっています。
企業様も学生も“早期の接点づくり”を目指した結果、1dayインターンが主流となっていましたが、経団連と大学は、インターンはあくまで「職業選択の一環であるべき」と定義しました。
学生にとって実りのある時間とするため、上述の条件を設定したのでしょう。
とは言え、これは大学と経団連が定義しただけなので、上記に法的拘束力はありません。
実際には、従来通りの開催も可能ですが、学生が社員様しか知り得ない情報を求めている実情を踏まえると、それをいかに提供できるか、または、母集団形成の段階からその点をどれだけ訴求できるか、が採用成功のカギとなるでしょう。
母集団形成の施策
学生が求める情報をいかに訴求できるかが母集団形成の成果に直結します。
ナビサイトとTwitter・Instagramで母集団形成を展開されると思われますが、情報を簡単に集められるようになった今、一方的な「説明」のみでは、学生は「リアルな情報をつかめた」とは思いません。
なぜなら、企業概要や事業内容はホームページで調べられるからです。
学生の「知りたい欲求」に答えるには、ホームページ、ナビサイト・SNSで掲載する情報をそれぞれ変えるべきです。
1.ナビサイトに掲載する情報
貴社の概要は、ホームページにまとめられているので、ナビサイトでは、そこを深掘りする必要はありません。
学生が気になるのは「自分が貴社の業務に対応できるか」と「貴社にどんな人がいるか」の2点です。
これを伝えるため、人事担当者様にやっていただきたいのが紹介文を書かないことです。
ナビサイトは学生に自社を紹介するための媒体ですので、上述の1文だけを読むと戸惑われるかと思います。
「何かを紹介して」と言われたとき、多くの人が「良いところを伝えよう」と考えがちです。
欠点を羅列すると、人が離れてしまいますので、採用活動においては、その考えがなおさら強くなるでしょう。
しかし、テレビやネットの通販番組のように、良いところだけを紹介されると、私たちは「何か裏がある」と無意識のうちに考えてしまいます。
それは、学生も同じです。
人事担当者様が文章を練り上げても、そこに良いことしか書かれていなければ、彼(彼女)らは「どうせブラックな部分があるんだろう…」と考えます。
人事担当者様にそのような意図はないでしょうが、学生にそう思われてしまったら、貴社が持ち駒から離脱するのは言うまでもありません。
私たちMOCHICA運営部では、そうならないための対策として「インタビューが有効」とお話ししています。
具体的には、入社2年目〜5年目の社員に入社の動機、仕事内容を語ってもらう、との方法です。
たとえば、入社2年目は社員は就職してからそれほど時間が経っていないので、学生と違い感覚で話せるでしょう。
一方、入社5年目であれば複数の業務を経験されていると思われます。
そのような社員様は、これまで経験してきた業務やキャリアプランについて話せるでしょう。
経験談の中には、成功体験と失談談があります。
成功体験を並べるのではなく、“いつ、どんな失敗をしてどう乗り越えたか”を語れば、作り込まれたようにみえません。
インタビュー記事の作り方については、以下にまとめていますので参考にしてみてください。
2.SNSの活用
SNSは、Twitter・Instagram・TikTok・YouTubeと、4つのプラットフォームに分けられます。
それらでの情報発信がスタンダードになっている今「人気のアカウント=多くのコメントがついている」とのイメージをもっている人事担当者様は少なくないでしょう。
しかし、実際のところ人事担当者様が「コメントで感想を聞かせてください」と呼びかけても、学生はなかなかコメントしません。
学生に貴社を認知していただくためには、MOCHICA運営部では「実務と関連がないところからアプローチするのが良い」とお伝えしています。
たとえば、以下の投稿。
社員の名前を出して休日の過ごし方を紹介しています。
インターンの段階ではどの会社にも行けるとは言え、そこは“ビジネスシーン”という学生にとって未知の世界です。
そんな背景もあり、「しっかりとやれるだろうか…」と不安をいだく学生は少なくありません。
それゆえ、彼(彼女)らは、企業のInstagramやTwitterなど、各プラットフォームの中において”自分の味方”を探そうとします。
人事担当者が自分の名前を明かすのは、学生にとって「社内に味方をつくること」に直結します。
「Instagramでよく見る▲▲さん」という味方がたった1人でもいれば、それは学生にとって「とりあえず▲▲さんに会いに行ってみよう」「話だけ聞いてみよう」といった応募する理由になります。
「いいね」が集まりやすい投稿の特徴については、以下の記事に各プラットフォームごとに実例を挙げて紹介しておりますので、参考にしてみてください。
3.「体験のみ」では離脱される
学生は、社員様しか知り得ない情報を得るべくインターンシップに参加しています。
接点確保のために、1dayインターンを開催する企業様も見受けられますが、開催期間が短いと学生は求めている情報を得られません。
インターンシップは学生にとって、職業体験の場として普及してきましたが、今は単に体験させるだけでは不十分です。
貴社から学生を離脱させない、という点においては、彼(彼女)らが「良い経験をできた」と感じられる時間と、プログラムを考える必要があります。
そこで、最初に考えていただきたいのが日程の組み方です。
(1)日程の組み方
学生に貴社の仕事内容や日常の雰囲気を鮮明にイメージしていただくために、インターンシップは3日~5日程度をかけるべきです。
開催期間は社内体制に余裕があれば5日、そうでなければ3日など、状況を見て判断していただいて構いません。
(2)プログラムの考え方
とは言え、会社側が一方的に伝えるだけでは単なる「説明」になってしまい、学生の印象に残らない可能性があります。
また、入社が決まっていない学生に機密情報を明かせないと考える人事担当者様もいらっしゃるでしょう。
そういった懸念を解消するために有効なのが「グループワーク」です。
たとえば、チームビルディングとは学生の緊張緩和と、企業理解と促進を目的に実施するグループワークの一種です。
冒頭で「今後は20代の顧客を増やしたい」と戦略の一端を明かした後、参加者にその施策を話し合ってもらえば、企業は機密情報を明かさずに、事業促進に役立つ(可能性がある)アイディアを得られます。
学生も事業戦略の一端に触れているため、真剣に臨むでしょう。
学生には実務経験がありませんので、社員様からみれば現実的ではないアイディアもあるかと思われますが、若い世代の意見を聞くのは企業にとってマイナスではないはずです。
グループワークを通じ、学生が主体的に考える時間・発言できる機会を創出すれば、一方的な「説明」にならず、学生の満足度を高められます。
①夏と秋冬でプログラムを変える
学生に自社を「就職先」として認識していただくには、グループワークを通じ、貴社の課題やビジョンを考えてもらう機会の提供が欠かせません。
文章で「課題やビジョンを考えてもらう」と書くのはたった一行に収まりますが、実際のところそれは、貴社の事業と視点の置き方によって変わります。
たとえば、MOCHICAの運営母体である株式会社ネオキャリアは、「ともにえがく、みらいを。」をコピーに掲げる人材系企業です。
人材派遣をはじめ、企業様のサポートにも携わらせていただいておりますが、会社の未来を左右するのは採用業務です。
そうした背景もあり、弊社では学生に「採用のリアルを体感してほしい」と考え、夏と秋冬で以下のようにプログラムを変えています。
●夏:実在する企業を1社選ぶ。その企業の課題を推察し、採用戦略立案。
●秋冬:新規事業立案プレゼン
■夏期インターン
人材事業に携わるうえで、必ず押さえて欲しいのが採用業務の役割と、そのプロセスです。
とは言え、社員が一方的に話すだけでは、学生にとって は大学で授業を受けているのと大差ありません。
彼(彼女)らが学んできた分野の話しを聞くわけでもないので、担当者が「核心をついた質問をして欲しい」と思っても、そんな質問は出ないのは目に見えています。
そこで弊社では、実在する企業のモデリングし、学生に採用戦略を立案してもらう。
弊社の社員がそれに対してフィードバックする、との方法で採用業務への理解を促しています。
■秋冬インターン
入社後は事業部に配属になりますが、いずれの部署に行っても、事業を根幹に係るミスは会社として防がなければなりません。
それには、事業と経営の仕組みを学ぶ機会が不可欠です。
「事業の運営・会社経営に必要な視点を学んで欲しい」との狙いがあり、弊社では秋冬インターンにて、新規事業プレゼンを実施しています。
学生の習熟度の図り方、人事担当者様に求められる準備については、以下の記事でまとめておりますのでご一読ください。
まとめ
インターンシップでどんなプログラムをやるかによって、貴社が持ち駒になるかが決まります。
ですが、ここで学生に忖度する必要はありません。
プログラムを考える上で押さえていただきたいのは、彼(彼女)らに頭を使わせることだけです。
学生は社員様のように貴社、または、業界に全体についての知見や問題意識はありません。
インターンシップへ参加する学生にあるのは「志望業界について学びたい」という意識のみです。
それゆえ、単に「説明」だけよりも、貴社や業界全体の課題解決策を考えさせるインターンシップに学生は集まります。
インターネットの情報のみで、先方の経営課題やビジョンを完璧に把握するのは不可能です。
それは、私たちビジネスパーソンもそうでしょう。
「学生を満足させよう」と考える、まずは「自社のイメージを鮮明にさせるためのヒントをあげる」くらいの感覚で、学生の分からないことを考えてみてください。